日本人と酒

われわれ日本人は,酒に弱い人が世界一多い民族だそうです.

酒に含まれるアルコールは体内でアセトアルデヒドに変化し,このアセトアルデヒドが酔いを引き起こします.アセトアルデヒドを分解する酵素には,低濃度のうちから働き始めるものと,高濃度にならないと働き始めないものがあります.前者の酵素を持たない人は,酒を飲むと血中のアセトアルデヒドの濃度が急上昇してしまうので,少量の酒でも悪酔いしてしまいます.

酵素のあるなしは,遺伝子の型で決まっています.最近の研究で,遺伝子の型には3種類あり,それぞれが「酒に強い」「酒に弱い」「ほとんど飲めない」という体質に対応していることがわかってきました.

アサヒビールこのサイトにも出ているように,白人には酒に弱い人はほとんどいないのに対して,東洋人には酒に弱い人が多く,なかでも日本人は「酒に弱い」「ほとんど飲めない」をあわせると約半分に達するそうです.

日本人には酔っ払ってしまう人が多いからか,日本では酔っ払いには寛容だと思います.私が少し英語を習ったカナダ人の留学生は,「日本に来て一番驚いたのは,背広を着てネクタイをした地位も収入もありそうな人が,街頭で酔っ払っていること.私の国であんな姿を人に見られたら,その人は社会的に終わりです」と言っていました.

その割に不思議なのは,宗教上の理由以外で酒を飲めない人がまずいないヨーロッパで,パブ等に行くと必ずノンアルコールビールがあるのに,日本では,最近普及してきたとはいえ,それらがなかなか見つからないことです.酒に弱い人が多いのに,「酒を飲まない」という選択をするとジュースやウーロン茶になってしまうのはなぜでしょうか?日本文化は決して多様性を認めない文化だとは思わないし,むしろ寛容に価値を認める文化だと思うのですが,こと飲酒に関しては不寛容なようです.飲酒の強要や「イッキ飲み」といった悪習も,だいぶん減ってきたというものの,まだまだ残っているようです.

(03. 1. 2)

[05. 4. 29追記] "Orange Juice"というブログに2005年1月11日・「最近の若いヤツは…酒を飲まないのだ」という記事があり,当ページにもリンクされています.